幻聴の世界を本当に知っていますか?
―当事者地獄、他人には笑い話-
刊行に寄せて
この本の著者であるHOPEさんは統合失調症を患い、回復への道を歩んでいる方です。
「幻覚や妄想」は統合失調症の方が多く経験する症状です。周りから見れば「あるはずのないこと」ですが、症状を体験する人にとっては「リアルに聞こえ、感じる」ものです。
また、この本の特徴は「回復の過程が描かれていること」です。著者の回復の過程にソーシャルフットボール(精神障がい者が行うサッカー・フットサル)が大きく関わったことはうれしい限りです。フットボールによって努力し、成長する喜びを得、仲間を思いやり、周りの為に貢献しようという思いから行動していきます。病気や障がいのある人の行動に対し、周りは「良かれと思って」こうしなさい、これはダメとつい言ってしまいたくなるものですが、この本に登場する周囲の人は邪魔せず見守っています。この好循環がさらなる成長に導いているのだと思います。
この本は著者の体験を、著者の受けた感覚に従って描き出しています。皆さんぜひ本の中で症状に巻き込まれてみてください。自分がこんな体験をしたらどうなるか、どう考えるか、ご自身のこころを追ってみてください。ぜひ手に取っていただければ幸いです。
HOPEさん、この本は今、そして今後統合失調症を患って悩む当事者やご家族、また統合失調症を理解したいと思う多くの方々へのHOPEになることを確信していますよ。
日本ソーシャルフットボール協会 理事長
佐々 毅